似たもの夫婦。

朝、パジャマがわりに着ていた黒いハイネックカットソーと黒いスパッツの上に、赤い絣の半纏を羽織っていたら、それまで機嫌良く大輔スペース(注:和室の隅に作られた大輔の玩具置き場兼遊び場)で積み木を積んでいた大輔が、突然、猛烈に怒りだした。
体当たりせんばかりの勢いで走ってくると、あぎゃあぎゃ言いながら母の胸元に飛びついて半纏の襟を掴み、凄い勢いで揺さぶり、引っ張り、挙句の果てには叫び出す始末。
「・・・・それ、脱げって言ってるんじゃないの。」
「・・・・そうみたい。」
試しに半纏を脱いで見せると、満足げに笑いながら大輔スペースに戻り、積み木遊びを再開した。やはり赤い半纏がお気にめさなかったらしい。
「やっぱりさ、大輔もお母さんには綺麗にしていて欲しいんだよ。」
「そうなのかな。」
「そうだよ。前に言ってたじゃん、お出かけの時にさ、ワンピースとか、スカートとか、女らしい格好して、お化粧すると、大輔手叩いて喜ぶって。」
「あー、確かに。」
「大輔もさ、だんだんわかってきたんじゃないの?綺麗なお母さんと、そうでないお母さんの違いがさ。同じお母さんなら、そりゃ綺麗なお母さんの方がいいに決まってる。やっぱりさ、家の中でもそれなりにちゃんとした格好してて欲しいんだよ。っていうか若ければさ、どんな格好しててもそれなりに見られるけど、三十路も半ばを越すとなぁ、いろいろきついもんがあるんだよなぁ。」
「・・・・・・。」
「しかも半纏だろ、半纏?十代のギャルなら可愛いけど、36で半纏はちょっとなぁ。半纏はやばいって。」
そういう夫の格好は、よれよれのトレーナーに駱駝色の股引(起毛素材・キルティング仕上げ)、思いっきり寝癖のついたヘアスタイルは、サリーちゃんの父上のようだった。
夫よ、そんな君が大好きです。