フォーエバー、婆様。

思えば私の大事な予定がある時に限って体調を崩し、予定変更を余儀なくさせるのが得意技だった婆様。


友達の結婚式の時も、友達の父君の葬式の時も、久しぶりに夫と二人きりで出かける筈だったクリスマスも、本当に久しぶりに会う友達との約束も、婆様の年寄り離れした好み(<焼き肉が大好き)と食い意地のせいでおこした腹痛の為に、泣く泣く諦める羽目になったものだった。


泣く泣く諦める羽目にはなったものの、腹痛をおこすほど肉が食べられるのだから、婆様はまだまだ元気で長生きできると、心のどこかで思っていたのも事実だった。


ボケたフリして家族をからかっては喜んでいた婆様。6歳の曾孫と本気で喧嘩して、すぐに仲直りしていた婆様。お洒落で、編物が得意で、ブラックジョークの達人だった婆様。


婆様。


秋に脳梗塞で倒れ、自発呼吸も出来なくなって、言葉も話せなくなって、それでも気に入らない看護士さんには、そっぽを向いて抗議する気力のあった婆様。流動食しか食べれなくても、艶々した顔色とふっくらした体型を保ち続けていた婆様。見舞いに行くとにっこり笑って手を伸ばしてくれた婆様。
昔の婆様には戻れなくても、まだまだ元気で、新しい年を迎えられると信じていたのに。大好きな焼肉は食べられなくても、大好きだった爺様の昔話は出来ると思っていたのに。


婆様。


こんなに突然、逝ってしまうなんて、それもクリスマスイブの日に、逝ってしまうなんて、ブラックジョークにも程がありますよ。


それとも人一倍賑やかなことの好きだった婆様のことだから、どうせ旅立つものならば、世界中が浮かれるこの日を選んで天に召されたのですか。それとも大好きな爺様と二人、ひさしぶりのクリスマスを一緒に過ごそうと思ったのですか。


婆様。


いつかその答えを聞かせてもらえるその日まで、私は、こちらで、がんばっていきます。だから婆様も、爺様と二人で見守っていてくださいね。そしてたまには、夢の中で、その冴えたブラックジョークを聞かせてください。


婆様。長い間、ありがとうございました。




追伸ー食べる間も無く捨てる羽目になったクリスマスケーキと、もう出してしまって回収のきかない来年の年賀状と、今更出すわけにもいかない喪中葉書のことは、その折りに、しっかり文句を言わせてもらいますから、覚悟しておいてくださいね。