ライフ イズ ミュージカル。

大輔は歌いながら踊るのが大好きだ。


両手を上げ、お尻を振りながら大好きなミッキーマウスのテーマや、YAMAHA音楽教室で習っている歌を大声で歌う。微妙なひねりを加えつつ、丸々としたお尻をふる様は、さながらブリキのアンティーク人形(50年代頃のアメリカ製か)。本人は真剣そのもの、とにかく一生懸命なのだが、ぷりぷりしたお尻の感じといい、あっているようであっていない、微妙にずれて味のあるダンスといい、見ていると、つい笑ってしまう。


そんな大輔だが、最近になって、自分で作詞作曲して歌うようになった。


もちろん、ちゃんとしたメロディにはなってないし、思いついたことや、目にしたことを、そのままお経のように節をつけて喋っているだけなのだから、歌というよりむしろ詩吟に近いのだが、本人はすこぶるご満悦。朝目覚めて、夜眠るまで、思いつくまま歌い続けている。御飯が美味しい歌、シロが可愛い歌、お風呂に入りたくない歌、歌、歌、歌。全部振り付き。最近の大輔の日常は、さながらミュージカルである。


大輔を連れて近所のデパートで買い物をしていた時のこと。


かなり安くなった冬物の子供服を物色していて、つい時間がかかり、大輔が退屈して駄々をこね出した。適当に相手をしてなだめつつ、めぼしい服を漁っていたのだが、ふと気が付くと、なにやら妙な歌が聞こえてきた。


ママはお買い物〜ママはお買い物〜ずっとお買い物〜でも大ちゃんは〜もう帰りたい〜♪
パパは41歳〜大ちゃんは3歳〜ママは25歳〜でもそれは〜嘘〜♪ほんとは37歳〜ってパパが言った〜♪


手にしていた服を放り出し、謎の歌を歌い続ける大輔を小脇に抱えて、脱兎の如く逃げかえったのは言うまでもない。