トイレでジェラシー。

最近の大輔はトイレの探索に凝っている。正確に書くと、使用中のトイレを観察するのに凝っている。
もう1歳6ヶ月になったことだし、そろそろ自分も、オムツの中に用を足すのではなく、大人と同じように、トイレですっきりしたいものだと考えたのか、単に両親の真似をしたいだけなのかはわからないが、誰かがトイレを使っている気配を察知すると、嬉々としてやってきて、ドアを開け、にこにこ眺めるのである。
いくら我が子とはいえ、用を足している最中を眺められるのは、どうにも落ち着かないので、「大ちゃん、寒いからドア閉めて。」とお願いする。すると、にこにこ笑いながらドアを閉める。そしてきっかり十秒後にドアを開け、にこにこ笑いながら眺める。仕方がないので、また「大ちゃん、ドア、閉めて。」とお願いする。するとまた、にこにこ笑いながらドアを閉め、やはりきっかり十秒後にドアが開く。以上エンドレスで繰り返し。用が済むまで終らない。
朝、出勤の仕度で忙しい夫が、やけに深刻な顔でキッチンにやってきた。
「・・・・やっぱり、父親は母親にはかなわないのかな。」
「どうしたの?」
「俺がトイレに入ってるとさ、あいつドア開けに来たんだよ。」
「ああ、今、なんかはまってるみたいね、大輔。終るまでずっと開けたり閉めたりするんでしょ?」
「それがさ、一回開けて、閉めて、もう一回開けるだろうなと思って待ってたら、開けずにどっかいっちゃったんだよ。一回開けたらもう気がすんだみたいで。お前が入ってるときはさ、出てくるまでずっと開けたり閉めたりしてるだろ?だのに俺だと一回だけ。何で?何で俺は一回だけなの?俺って、それだけの価値しかないのかな?ね、どう思う?ね?ねぇ?」
親バカという言葉が、久しぶりに太文字ゴシック・フォントサイズ72で浮かんだ冬の朝。