母の願い。

よく行くスーパーのレジのチェッカーさんが、いつもの優しいマダムから、バイトらしい若い美人に変わっていた。手を叩いて喜び、満面の笑顔で愛想を振りまくわが子を見ながら考える。
大輔は目鼻立ちのはっきりした華奢で清楚な美人が好きだ。
夫も目鼻立ちのはっきりした華奢で清楚な美人が好きだ。
単なる偶然なのか、それとも遺伝子の神秘なのか、女性の好みがそっくりな二人。
ところで私は、清楚な美人かどうかはともかく、今も昔もずっと昔も華奢であったことは一度も無い。それでも一応恋愛結婚だし、7年間特に問題も無く、円満に続いているところをみると、夫にとって私は、好みのタイプではないにしろ、相性の良いタイプであることは間違いなさそうだ。
大輔が成長して、夫と男同士の話をするようになった時、理想と現実の違いについてしみじみ語り合った時、その結論が明るいものになるかどうかは、両親の努力と大輔の女運にかかっている。
人と人との繋がりは縁と努力と運の賜物。先のことは誰にもわからない。願って必ず叶うものでもない。だからこそ、良きにつけ、悪しきにつけ、縁あって結ばれた人は、皆、尊く愛しいと言ったのは、さて、誰だったか。
グッドラック、大輔。グッドラック私、そして夫。十数年後の未来、理想と現実の違いについて、お互い笑顔で語り合いたいものだと、お姉さんに優しくされてうっとりしている大輔を見ながら、強く願う私だった。






・・・・仮にもし、女運が最悪で、更にはそれが素で同性にときめく人生になったとしても、あるいは息子が娘になったとしても、母は変わらず、君を愛しているよ。