父さんは暢気者。

大輔が風邪を引いた。前日、布団を蹴飛ばしたまま寝ていたのがよくなかったらしい。気付いてすぐにかけ直したのだが、遅かったようだ。
熱はなく、咳もまばらで、食欲は旺盛。大したことはなさそうだが、鼻水が止まらない。愛読している某育児雑誌曰く、
「鼻水が出ている時は、鼻の下が荒れないように、濡らしたガーゼでそっと拭いてあげてください。赤ちゃんは自分で鼻をかむ事ができません。まめに取ってあげてください。水分補給も忘れずに。」
その全部を断固拒否された場合、どうすればいいんでしょうか。
何かに気を取られている隙に鼻の下を拭ったり、鼻水取り器で吸ったりしていたのだが、幼児とはいえ、やはり人類。不意を付かれないよう両手で鼻をブロックしたり、何かあっても対応できるよう、一定の距離を置いて座ったりし始めた。そのうち、なまじ離れているよりも、思いっきり密着した方が、敵の攻撃を容易に封じられることに気付いた大輔、母の胸にしがみついたまま、降りなくなってしまった。
おやつを食べるのも抱っこのまま。お茶を飲むのも抱っこのまま。おむつを替えるのも抱っこのまま。(足だけ床につけさせて、片手でおむつを交換する。パンツ型紙オムツならではの技)母のトイレも抱っこしたまま。(泣)
「やぁ、こうしてみると、人間も猿も一緒だなぁ。猿山の猿みたい。」
「12kgもある小猿なんて、猿山にはいないわよ!」
「じゃ、アフリカのジャングルだ。マウンテンゴリラ。そうそう、オラウータンって、どこにいるんだっけ?」
あまりと言えばあまりな夫の発言に、夕食のメニューは、夫の大嫌いなタラコづくしにしようと、固く固く心に誓う私だった。