お父さんは心配性2

子供というものは、例えそれが三十路を過ぎ妻も子もある立派な大人であっても、パニックになれば本能的に親を頼ろうとするものらしい。
夜、母が床につこうとすると枕もとの電話が鳴った。こんな遅くに何事かと訝りながら出てみれば、先日二人目が生まれたばかりの我が息子。
「・・・母さん、今日見舞いに来てくれたんだってね。遠くから、わざわざありがとう。」
「いいのよ、別に。可愛い赤ちゃんね。お姉さんも、お父さんも、男前だって言ってたわよ。」
「・・・・ほんと?」
「ほんとよ。色が白くて鼻が高くて。綺麗な赤ちゃんだったわよ。」
「・・・・。母さん、本当のこと、言ってくれよ。気を使うのはよしてくれ。」
「は?」
「確かに色は白いさ。でも、鼻は、鼻は・・・・・潰れてたじゃないかぁ!!!!」
・・・・弟よ。潰れてるんじゃなくて、赤ん坊の鼻は、みんな低くて上を向いているものなんだよ。
この弟、長女の胎毛*1が生え変わる時も、死にそうな声で夜中に電話をかけてきて
「彩ちゃんの、彩ちゃんの髪が抜けるの!ハゲになっちゃう!女の子なのに。女の子なのにハゲになっちゃう!!」
と騒いだらしい。
「ほんとに粗忽者っていうか、心配性っていうのか。ちゃんと生えてくるから心配ないっていってんのにねぇ。一体誰に似たのかしら。」
「親ばかよねぇ。」
そう相槌を打ちながら、待てよ、そういや大輔がティッシュペーパーを食べた時、あわてて実家に電話したよな。今3回続けてくしゃみしたけど風邪じゃないだろうか、お風呂にいれても大丈夫??て聞いたこともあったっけなどど思い出し、さすが姉弟血は争えない、この親バカっぷりはやはり遺伝だと、しみじみ思った私だった。
「ところで、名前決まったの?」
「それがねぇ、まだだって言うのよ。これから考えるんだって。のんびりしてるわよねぇ。」
・・・・弟よ。鼻より名前がついてないことを気にしなさい。

*1:生まれたばかりの赤ん坊に生えている頭髪