魔性の幼児。

大輔は生協の配達員さん(男性・既婚・3人の子持ちで子供好き)が大好きだ。

お気に入りのビデオを見ていても、お気に入りの玩具で遊んでいても、彼の声が聞こえるとダッシュで玄関までやってきて、にこにこ笑いながら、さかんに大輔語で話しかける。帰り際には、滅多にしない「バイバイ」までしてみせる。1週間に一度、数分顔を会わせるだけなのに、この懐き様。余程相性がいいのか、それとも子供好きオーラの威力なのか。まぁ、いずれにしろ、好きな人が増えるのはいいことだ。

夜、夫にその話をすると「俺には抱っこされるのも嫌がる癖に。何で?」とひどく落ちこむ。

「やっぱりキャリアの違いじゃないの?向こうは3人子供さんがいるそうだから。」
「そうかな。でも俺、実の父親なのに。そりゃ朝ちょっと顔会わせるくらいしかできないけど、精一杯、可愛がってるつもりなのに。それなのに他人の父親に負けるなんて何か悔しい。」

わかる。わかるよ、その切ない気持ち。でもね、夫。

母は知っている。抱っこを拒否されてむっとしている父の顔を、大輔がそれはそれは嬉しそうに見ていることを。おはようのキッスをかわされて、一人寂しく涙する父の背中を、それはそれは楽しそうに見ていることを。

大輔は、お父さんが嫌いなんじゃない。ただ、お父さんをいぢめるのが大好きなだけなんだね。

そうとは知らない夫、少しでもコミニュケーションを取ろうと早起きして、逃げる大輔を追いかけている。

「大輔ぇ。お父さんと遊ぼうよぉ。」
「あぎゃー!!」
「大輔、ねぇだいす・・・うぐっ。(<鳩尾を蹴られた)」
「あきゃ!あきゃ!」



大輔1歳3ヶ月。父を弄ぶ魔性の幼児。
・・・・ちょっとは手加減してあげなさい。