幸福の白いブラパッド。

大輔は被り物が大好きだ。
正確に言えば、被った姿を誰かに見せて「あら、大ちゃん、可愛い。」
と誉められるのが大好きだ。母が用事で手が離せない時、見ていたビデオに飽きた時、ちょっと寂しくなった時、手近にあるものを頭に被り、にこにこ笑いながら誉めてもらいにくる。布製の入れ子式になった積み木の一番大きな箱や、お気に入りの黄色い毛布、母の帽子、自分の青いクマの絵のついた腹巻。とにかく頭に被れて、色や形が気に入れば、何でも被る。被れなければ乗せてみる。そうしてにこにこ笑いながら、両手をすっくと上に上げ、くるくる回ってみせるのだ。
夕方、洗濯物を取りこんで、畳みながら片付けていた時、ふと視線を感じて振り向くと、大輔が頭に白くて丸い、小さい帽子のようなものを載せて、それはそれは嬉しそうに笑っていた。見ればもう一つ、同じ形同じ大きさの丸いものを、右手に持って振りまわしている。
「あら可愛い。大ちゃん可愛いね。」
そう言いながら近付いて、頭に載せた丸いものを手にとり見てみると、それは私のブラパッドだった。
「・・・・か、可愛いね、大ちゃん。」
「あぎゃー!!」
白い卵型のブラパッドは、中央が丸く盛り上がっていて、大輔の頭の丸みにぴったりだった。どんなに回っても落ちないパッドが気に入った大輔、天に向って両手を上げ、くるくる回って踊っていた。夕陽がすっかり傾いて、灯りをつけない部屋の中が、薄暗くなってしまうまで、それはそれは楽しそうに、意味不明の歌を大きな声で歌いながら、母のブラパッドを頭に載せて、いつまでもいつまでも踊り続ける大輔を見守りながら、本当の幸せとは、こういうことを言うのかもしれないと、しみじみ思う私だった。

「あぎゃー!!」