通は噛まずにすすりこむ。

県外の友人から「えーあれを飲むの?!マジで?!信じらんない、人間じゃない。」とまで言われたが、本場讃岐のうどんは噛んで食べてはいけない。それが作法。それが礼儀。
ラーメン大好き小池さんのように、すすりこみすすりこみすすりこむ。すすりこむ麺がナイヤガラの滝のように見えるまで、すすって、すすってすするのだ。大体普通盛りで完食までの所要時間3分が目安。

だいたいあれだけコシの強い麺を噛んでいたら、半分食べた時点で残りの麺が伸びきっている可能性大。もったいないし、失礼だ。>職人さんに対して。

とはいえ、この技、慣れないと別の器官に麺が入りこんだり、むせて噴出したりと結構危険度が高い。また、この食べ方だと盛大に汁が飛ぶので、服を汚したくない方は止めた方が無難だと思う。

今から10年ほど前、あるアパレル・チェーン店のショップマスターをしていた頃、本社から視察に来た上司に、重箱の隅をつついてつついて突き破るような指導を受けた。延々4時間、上司の嫌味攻撃を受け続け、いい加減キレかけた頃、昼食の時間になった。
本場讃岐のうどんが食べたいという上司。そこで同じテナントに入っていたうどん屋に連れていった。

「やぁ、だしが美味しいねぇ。やっぱり本場は違うなぁ。」
「そうでしょう?でもね、麺を噛んでしまったら意味がないんです。こうつるっと。つるつるっとすすりこんで、初めて本当の美味しさがわかるんですよ。」
「ほほう。そうなんだ。こ、こう?こう?こ・・ぶふっ。」

白く艶やかな麺を鼻から出し、目を白黒させている上司。「だいじょうぶですか?あ、お水、お水飲みます?」一応優しく介抱しつつ内心大いに溜飲を下げたものだった。今となっては懐かしい思い出である。